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コラム

知財風土記

第25回 
「日本人のノーベル賞と特許」

 このところ毎年のように、日本人のノーベル賞受賞が続く。その多くは特許発明が関連しているのに注目し、特許庁のロビーで「ノーベル賞と特許」のパネル展示が行われているので、見に行った。
 賞が生まれたきっかけは、アルフレッド・ノーベルが発明したダイナマイトが莫大な利益を上げたことの社会還元といわれている。ただ、ノーベルはもともと化学者で、火薬や採掘、合成ゴムなどでも多くの発明をし、世界で3百件を超える特許を得ていたらしい。ノーベル賞は発端から産業技術と深く結びついていたといえよう。
 日本人のノーベル賞は湯川秀樹が1949年に中間子の発見で受けた物理学賞にさかのぼり、このニュースが敗戦に打ちひしがれていた日本人を勇気づけたことはよく知られている。その後の日本人受賞は、1965年の朝永振一郎による物理学賞が続くが、業績は、繰り込み理論と量子電磁力学の発展だったように、賞は基礎科学に対するものという印象が強かった。
 日本の戦後復興と経済成長は、科学技術の力によるところが大きい。江崎玲於奈のトンネル効果の実証と半導体超格子の考えは物理学賞(1973年)につながったが、これはソニーの技術開発過程から生まれている。それ以後の受賞も産業分野と関連の深いものが多い。
 特許庁内の展示では、江崎をはじめ、赤崎勇、天野浩、中村修二のLED発明に対する物理学賞(2014年)、白川英樹の導電性ポリマーによる化学賞(2000年)、野依良治の不斉合成触媒による化学賞(2001年)、田中耕一の生体高分子解析のための質量分析法による化学賞(2002年)、そして吉野彰のリチウムイオン電池の実用化による化学賞(2019年)がある。
特許出願広告平4-24831  もっとも自然科学の物理・化学だけではなく、生理学・医学賞の分野でも日本人は特許発明に結び付く多くの業績を上げてきている。山中伸弥の多能性幹細胞iPSは2012年の生理学・医学賞、大村智の抗寄生虫薬エバーメクチンによる同賞(2015年)、本庶佑の免疫チェックポイント阻害剤オプジーボでの同賞(2018年)が並ぶ。
 アジアでは日本人の受賞が群を抜いているが、それはこれまでの国力の反映といえるだろう。けれどもインドでは1930年のノーベル物理学賞を、チャンドラセカール・ラーマンが光の散乱効果の発見で得ているし、中国人の受賞者も、在外人を含めると相当な数に上る。
 ところで経済的な利益を生む発明であればあるだけ、それがもとになって争いを誘発する。企業内の研究では職務発明の報償をめぐる従業員と企業が、企業間、あるいは大学と企業の共同研究では特許発明の利益配分が、特許権者と模倣者の間では特許権侵害をめぐる争いが起こりやすい。ノーベル賞につながる発明でも、いくつかの特許紛争が現在続いている。
 有名な例では、青色発光ダイオードの発明で、中村修二氏と氏が席を置いていた日亜化学の間で職務発明の対価をめぐり深刻な対立が生じ、現在も解消されていない。本庶佑氏のオプジーボもガン治療薬としての実績が上がるにつれ、共同研究相手の小野薬品との間で利益配分の裁判が起きた。吉野彰氏のリチウムイオン電池では、特許権者の旭化成と中国の模倣企業との間でこれも裁判となり、関連製品の販売差し止めと損害賠償が中国の裁判所で認められている。
 職務発明では、こうした対立が頻発するため、法律の改正で関連規定が整備されたが、紛争の余地は残っている。また、特許権侵害訴訟では、損害賠償額の上昇を図る法改正が中国、韓国で行われているし、日本でも判例の変更によって損害額の算定を増額させる動きがある。共同研究の利益配分は、基本的には契約の問題だが、今後は開始時の契約でどう利益を配分するか、一層の注意が求められるだろう。
 日本にとって問題なのは、発明を生む研究を活性化させる予算措置が細ってきていることで、これについては国家的な戦略の見直しが必要といえる。
 (2020.10)

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