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コラム

知財風土記

第28回 
「湖西の名所」

 琵琶湖の西岸、湖西の地は、京都と比叡山で背中合わせにあり、歴史的な名所が多い。11月の末、大津市で開かれた謡曲の発表会に出演した機会に、そのいくつかを回った。
 比叡山はもちろん延暦寺のある山で、寺を訪れたとき紅葉は終わりに近かったが、それでも霊山のおごそかな雰囲気が体を包んだ。根本中堂は大改修の最中ながら、開祖の最澄以来1200年以上も、不滅の法灯を掲げ続けている。一時は延暦寺のあまりの勢力に、信長が焼き討ちを企てたり、戦国時代、日蓮宗の圧迫に苦慮した延暦寺が日蓮宗徒に征伐を加えようとする宗教戦争も起こった。
 比叡山を下りた琵琶湖岸は坂本といわれる地で、僧侶の隠居所の里坊が石垣を並べ、また、天台真盛宗の総本山、西教寺がある。明智光秀の菩提寺だ。聖徳太子の創建と伝えられ、室町時代、比叡山で修行した真盛上人が入寺して堂塔と教法を再興した。ここは折から紅葉の真っ盛りで、眼下の琵琶湖とともに目を楽しませてくれた。
 湖岸にはかつての坂本城跡があり、遺構が少し発掘されている。城は信長が明智光秀に命じて築かせたもので、延暦寺の監視と琵琶湖の制海権を獲得する狙いがあったという。湖面に見え隠れする石組からその姿を想像するしかない。
浮御堂  近江八景と称する名所の数え方がある。三井の晩鐘、唐崎の夜雨、堅田の落雁などが並び、八景の半分は湖西に位置している。もともと中国の簫湘八景という漢詩と景観の結びつきがあったのをモデルに、琵琶湖の景に置き換えた趣向として室町時代に始まった。江戸になると北斎や広重の浮世絵に、また文人たちの詩歌にも題材とされ、幕末から明治にかけてこの呼び方が広まったらしい。堅田には浮御堂という小さな堂が湖上に建っている。比叡山の僧源信が湖上の安全と衆生済度を願って建立したといい、湖西の象徴的な堂宇である。芭蕉は、鎖あけて月さしいれよ浮御堂 の句を詠んだ。
 比叡山に上る坂本ケーブルは、昭和2年開業の日本一長いケーブルカー。駅の近くにある日吉大社は、平安京の北東、表鬼門を鎮座する神社で、2100年の歴史を数え、全国に3800余りある分霊社、日吉、日枝、山王神社の総本山になっている。ここも紅葉が見事で、茶店で一休みしながらしばらく見とれた。そして、琵琶湖名産の鮒ずしがあったので、土産に買い求めた。
湖上に立つ白髭神社の鳥居  謡曲の会は公謡会といい、名刹三井寺の隣にある大津市伝統芸能会館で開かれた。能舞台をそのまま収めた立派な会場だ。謡の愛好家が各地から集まり、湖西の名所を織り込んだ謡曲を披露した。近江八景や竹生島、白髭神社の縁起を説く白髭などの曲が並ぶ。
 私も舞台に座り、兼平という曲のワキを謡った。源義仲はこの湖西の戦場粟津が原で最期を迎えるが、弔いに来た旅の僧が、そこに向かう柴舟の中で、棹をさす老人から湖畔の景色の説明を聞く。老人は義仲に仕えた武将兼平の霊だった、という趣向で、世阿弥の作。比叡山のほか、山王二十一社、八王子、戸津坂本、波止土濃(はしどの)、月の横川、唐崎の一の松が名所として紹介されている。
 このように、湖西は歴史と風土に彩られた魅力的な地だが、過去には琵琶湖への排水による富栄養化が赤潮を発生させたこともあり、住民を上げて環境維持に努めてきた。天下に誇る名勝の地は、今後も末永く、豊かな文化の土壌であり続けてほしいと思う。
 (2022.2)

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